陶芸家 北側 雄一さん < First interview >  前編

陶芸家 北側 雄一さん < First interview > 前編

第3回目の「作り手の声」は、
京都で作陶を続ける陶芸家・北側雄一さんです。

どこか品のある関西弁と、言葉を丁寧に選ぶ優しい語り口が印象的で、
初対面でも不思議と安心してしまう人です。

今回は、京都市内の住居を兼ねた工房で、実際にお会いしてお話を伺いました。
工房は驚くほど整理され、清潔感がある。
その空気感のままに、北側さんの器もまた、派手ではないのに目が離せない。
形はシンプル。けれど、触れるとわかる“丁寧さ”があります。

「お気に入りの器として使ってもらいたい。」
そう語り、ただただ使われるうつわを目指して制作に励む、北側さん。
どのように陶芸と出会い、
作り手としての軸を育ててきたのか。

前編では、陶芸の世界へと踏み出した原体験から、
職人として過ごした日々、そして独立に至るまでの歩みを通して、
北側雄一さんという作り手の「芯」に迫ります。


陶芸の原点は、家でも学校でもなく「美術館」だった

「これから先どうしていくかとか色々考えたりとかしてる時で、
そこにバチッとはまっていったっていう感じがあるかな」

20歳くらいの頃、美術館で絵や国宝の陶器を見たとき、心をつかまれた。
そこから体験教室に通い、京都の学校へ。
作る面白さと、自分の手から生まれたもので人が喜んでくれる嬉しさを知ることに。

「これから40年、50年と仕事をしていく中で、
こういう仕事でやっていけるといいなって」

特に家族が陶芸やアート、ものづくりをしているわけでもない。
その中でも、出逢ってしまった。

“好き”が、“生業”に変わっていく瞬間の熱が、言葉の端々に残っています。


職人としての6年が、器の“精度”をつくった

訓練校を経て、京焼の窯元へ。

料亭や旅館の器を手がける窯で、約6年間、
職人として制作に携わりました。

「京都の焼き物自体が繊細な感じやけど、
僕が行ってた窯元は料亭の器とか旅館の器を作るところで、より繊細に作ってた」

そう語る北側さんの仕事ぶりには、確かに“現場で磨かれた精度”が滲みます。

その後も大阪で陶芸教室に携わるなど、紆余曲折を経て独立。

「独立まで11年くらい。独立してからは6年くらいかなぁ」

静かに積み上げた年月が、器の手触りにそのまま現れています。


うつわだけでなく、仕事道具も。

実は、文房具が好き北側さん。
使い心地や構造に、つい目がいってしまうのだと言います。

そういった視点もあってか、
作陶の道具は、既製品に頼らず、自分の手に合う形を考えながら作っている。

「多分ね、みんな自分で作ってると思いますよ。」

そう話しながらも、
自身で作った道具を、愛でながら、手入れも怠らない。

丁寧な仕事はこんな細かな所からも生まれる、と感じました。


“使う器”を作る──その言葉の重み

「使う器を作ってるんで、買ってもらったお客さんに、
お気に入りの器として使ってもらいたい」

北側さんの中心にあるのは、徹底して“使い手”の感覚です。

そしてその感覚は、後編で詳しく触れる、
細部まで設計された、“使うための気持ちよさ”にあらわれています。

 

後編では、北側雄一さんの器が「また使いたくなる」理由を、作品そのものから紐解きます。


お話を伺った作り手

北側 雄一

作り手:北側 雄一

京都で作陶する北側雄一さん。
形や厚み、手に取った時の感触まで丁寧に整えた器に、釉薬がつくる静かな表情が心地よい個性を生み出しています。