陶芸家 北側 雄一さん < First interview > 後編
前編では、
北側雄一さんが陶芸と出会い、職人としての経験を重ねながら、
「使うための器」をつくる作り手へと至るまでの背景を辿りました。
後編では、実際に器を手に取りながら、
北側さんの作風をかたちづくる釉薬や造形、
そして細部に込められた“気持ちよさ”の設計について掘り下げていきます。
釉薬が流れ、器に「変化」を残す
北側さんの作風の核にあるのは、オリジナルで調合した釉薬。
窯の中で溶け、流れ、溜まり、止まる。その動きで器の表情が決まります。
「釉薬が溶けて流れて、模様ができたり、溜まったり。そういう変化が出るように」
いまのメインは3つの釉薬。
鉄の発色によるグラデーション、深みのある黒、そして赤土に白釉を掛けた“変化のある白”。
真っ白ではなく、濃淡やにじみが出る白。
黒も、ただの真っ黒ではなく、流れの中に茶や緑の揺らぎが潜む。
どれも料理を邪魔せず、むしろ引き立てるための“静かな色”です。
形はシンプル。でも、余白までデザインされている

轆轤で成形したものを、指や道具で少し曲げて“動き”をつくる。
そのわずかな変化が、盛り付けの景色を整えます。
「どんなものを入れても、ここに余白ができるような形にしてる」
真ん中にちょこんと置くだけで、余白が生まれ、美しく見える。
器が“盛り付けを助けてくれる”感覚が生まれるのは、そのためです。
裏返すと見える、高台の造形。
角を立て、竹の節のように見せる「竹節高台」は、北側さんらしい仕事。
「ここでも見て、ちょっと楽しめるように」
表の派手さではなく、
使うほどに効いてくる“静かな工夫”が、
器の佇まいをきゅっと整えています。
持った瞬間にわかる。「気持ちよさ」の設計
マグカップの持ち手は、縁に向かってわずかに薄くし、内側に丸み。
指のカーブに合うようにして、持ったときのフィット感をつくっています。
片口は、水が垂れないように何度も試作。
「スパッと切れるように」
注いだあとに酒が垂れない。
それだけで、お酒の時間は驚くほど気持ちよくなる。
北側さんがつくっているのは、まさにそういう“体験”です。
暮らしが器に混ざる。ぐい呑みでウイスキーを

お酒が好き。日本酒も、ウイスキーも、ワインも。
だから、ぐい呑みも型にはまりません。
氷をひとつ入れて、ウイスキーをロックで。
花のつぼみをイメージした形もある。
「ぐい呑みは、全部違う形で作ろうと思ってる」
“自分が使いたい”の延長に、
“お客さんが使いたい”が重なっていく感じがします。
一番嬉しいのは、「また買いに来た」
「去年初めて買ってくれた人が、
一年間使って気に入ったから、また買いに来た」
それが一番嬉しいと、北側さんは言います。
器は、飾るものではなく、暮らしに入るもの。
北側雄一さんの器は、
日々の中で静かに頼もしく、
確かに“次の一回”へつながっていく器です。
これから──釉薬を増やし、幅を広げていく

今挑戦したいのは、新しい釉薬。
「失敗だらけで、
ちっちゃいテストではうまくいっても、
量を作ると全然うまくいかない」
それでも試行錯誤を重ねて、少しずつ幅を広げていく。
その姿勢もまた、北側さんらしい。
一歩一歩、着実に。丁寧に。
「ぜひ一度使ってみてください」
その言葉の通り、
使った瞬間にわかる“気持ちよさ”があります。
そして、使うほどに、静かに好きになる器です。